コマーシャルギャラリーというシステムについて 後編

前半ではとあるアメリカのアートコンサルタントのウェブサイトからの要約を書きましたが、今回は自分の経験や意見を書きます。

作品を発表し始めて6年くらい(作り始めたのは15年くらい前です)

 私の場合スタートが極めてラッキーだったのでたいした売り込みもせずにヨーロッパやアメリカでの展示やアートフェアへ参加できました。が、世界的経済危機によってギャラリーが閉鎖、また一からのスタートとなりました。今では地元に回帰して上海中心に活動しています。上海でもきっかけは知り合いから誘われての参加に始まり、作品を見たことがある人にばったり会うことも増え、前の展示を見たことがあるギャラリーに誘われたりといった感じで少しずつ活動が広がりつつあります。
 意外に思われるかもしれませんが上海は外国人が多いせいかコマーシャルギャラリーもとても多く、現代美術も盛んです。私の作品を買ってくれる人の90%くらいは欧米人ですし、外国人がオーナーのギャラリーもとても多いです。

 私も前日本に住んでいたときは作品の展示のためにお金を払ったりしていましたが、正直に言って払う代金に匹敵するだけの効果は得られないと思います。(まるで効果がないわけではなく、結局普通一回の展示で作られるキャリアは微々たるものであって地道に積み上げていくしか方法がない)毎回毎回お金払って参加してたら絶対続かないし、そのせいで材料費が足りなくなったりしたら本末転倒だと思います。上海に引っ越してからは展示のためにお金を払った事は一度もありません。今思えばそんなことにお金を使うんだったら貯金しておけばよかった!とホントに思います。
 ましてや本気でアーティストを続ける気があったら、いつか仕事を辞めて専業アーティストになるときのために1円でも多く蓄えがあったほうがいいし、どうせ一人前のアーティストになるには10年も20年もひょっとしたらそれ以上もかかるんだから焦ってお金を払って経歴を作るより地道に少しづつ進んでいったほうが良いなあと今では思います。

 サイトに書かれてた中で最初はカフェやレストランやブティックやどこでもいいから展示しよう、というのはあまりまだやってる人が少ない感じがして(今住んでないからわかりませんが)新鮮でした。でも、ひょっとしたらあまり人が来ない貸し画廊とかでお金払って展示するよりずっと多くの人に見てもらえる気がします。展示を頼まれたほうもイメージアップになるから結構OKしてくれるかも。
 日本人は美術館やギャラリーにわざわざ行く人が極端に少ないといいます。しかし、私が最近思うには、日本人にとっては江戸時代の浮世絵のころからアートというのは街中に身近にあるべきものであって、わざわざ見に行くという感覚があまりないのかも。だったらこちらからアートをもっと身近なものにしてしまえば良いのにと思うわけです。

 私的には日本に住んでるより上海のほうがチャンスがたくさんあっていいなあ、とは思いますが中国在住の日本人作家は数えるほどしかいません…しかも中国語覚えたりとこちらに慣れるまでそうとう大変なので強くお勧めはできない感じです。でもアジア的なダイナミックさと適当さへの適応能力がある人にはお勧めです。一度慣れてしまえば全然平気というかむしろ気楽ですから。この国では少なくとも食べるものには困りませんし。

 

現代美術作家 シムラヒデミ
主に刺繍糸を素材に作品を制作するアーティスト。大学でファッションデザインを専攻、卒業後3DCG制作の仕事に就く。
2005年より現代美術作家としての活動を開始。デビュー直後にパリで個展を開催する等順調に海外での活動を広げる。2006年より社員旅行をきっかけに好きになった街、上海へ移住。それほど長く住むつもりではなかったものの、リーマンショックによる画廊閉鎖など予想外の展開に翻弄され、7年近く住んでしまう。
2013年12月日本帰国、埼玉県所沢市在住。引き続き現代美術作家として活動。現在、2025年のアーティスト活動20周年の為に作品を作り溜めている。

このブログではアート・文化・歴史に関する考察、自身の活動報告等を投稿しています。
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