私は2010年上海万博があった年に半年くらい蘇州の本色美術館というところで滞在制作してました。今日はどうしてそこに行くことになったのか?のお話を書きます。
蘇州へ行く前の2009年には上海市の徐家匯という東京で言えば新宿とか秋葉原みたいな高層ビルの立ち並ぶところに住んでいました。その頃住んでた高層アパートの横の道路が、毎晩夜中に万博前のインフラ整備のため、道路を掘り起こして水道管とかを新しく入れ替えるという工事が始まり、更に昼間は住んでた部屋の上の階の改装工事が始まり、騒音のため昼も夜も眠れない!という辛い状況になったのです。
そこで、2010年の始めに上海の郊外に引っ越したのですが、しばらくしたらそこでも水道管工事が始まり、ちょっとノイローゼ気味な感じでした。
ある日、巨鹿路というちょっとおしゃれな建物やショップが並ぶ通りにあるお気に入りの本屋「渡口書店」に行った時に、まだ出来て間もない本色美術館のリーフレットが置いてるのを発見。写真を見たらカッコ良い建物で、アーティスト・イン・レジデンスもやってると書いてあったので「面白そうだなー」と思い、「私これ行きたいわ。」と言ったら、たまたま友人の一人がこの美術館の展示をキュレーションしてるキュレーターさんと知り合いで、しかも近々その人と一緒にご飯を食べる約束が有るとのこと。
そのご飯を食べに行く時に私もお邪魔して、作品やポートフォリオも見てもらってOKが出たので、無事本色美術館での滞在生活が決まったのです。(コネを使った感じになってしまいましたが、実際中国では紹介してもらうと物事がスムーズに進むということはよくあります。)
蘇州は上海から高速鉄道で30分の「東洋のベニス」と言われる歴史のある街です。運河が有る古い町並みや、古い庭園やお寺などが観光の目玉になっています。しかし、私が滞在していた本色美術館はなぜか市の中心から車で20分位かかる工場と農地に囲まれた工業地区にいきなりあり、美術館の庭から見える風景はこんな感じ→でした。
美術館は総面積6,000平米もありかなりの広さで、しかも深圳出身の館長さんが自費で建ててしまったという不思議な美術館です。
「なんでここに建てたのか?」聞いてみたら、「土地が安かったから」とのこと。更に、「建物に使ってある古いレンガとか木材がカッコいいですね。」と言ったら、「あれは蘇州の古い家を取り壊した時に出る廃材を取り扱ってる市場があって、そこから買ってきて使ってるんだよ。廃材は安いからねー(笑)。」とのことでした。
本人は冗談半分に「安いから」だと言ってたけど、実際は単に安いからというだけの理由ではなく、この土地を選んだのは、美術館の運河を挟んだ向かいに良い感じの古い赤レンガ倉庫があって、そこも合わせてアートエリアとして再開発しようとしているというのと、古い廃材を再利用して蘇州の文化を保存しようとしているのです。
ここにいる間は上海にいるのとは全然違った面白い体験をしたので、今の私に大きな影響を与えた出来事でした。それについても、また後で書きます。
この美術館は大々的にアーティスト・イン・レジデンスへの募集をしているわけではないので応募者も少ないし、滞在用の部屋やスタジオは余ってるので、たぶん選考も通りやすいと思います。ただ、周りに何もない郊外にあるのと、スタッフもほとんど英語が話せないので、中国語が話せないとちょっと辛い感じです。でも、初の海外からの滞在者だったMayaさんについてここのスタッフは、「来た時は全然中国語が話せなかったけど、私たちと毎日練習してたらかなり話せるようになったよ。」と言ってたので、もしかして覚える気さえあれば言葉についてはあまり心配しなくても大丈夫なのかも知れません。