個展をセルフプロデュース型で開催する場合の手順をシリーズ記事として説明しています。
前回の「個展ができるまで⑦-作品タイトルとステートメントを書く」では、作品タイトルとステートメントが作品や展示を構成する大切な要素であることについて書きました。
今回は、私が作品説明文(ステートメント)を書く時に気を付けていることについて書いてみたいと思います。
ステートメントとは、作品のコンセプトや制作意図を文章で伝えるものです。
ギャラリーや美術館、作品集、Webサイトなどで使われることが多く、現代美術では欠かせない作品情報の一つです。
作品を作ることと、文章を書くことは違う
私の場合、作品を作る前にタイトルやコンセプトはある程度決まっています。
そのため、「どんな作品を作りたいのか」が分からなくて困ることはあまりありません。
一方で、それを言葉で分かりやすく説明することは、また別の難しさがあります。
自分の中では当たり前になっていることほど、他の人に伝えるための文章にするのは意外と難しいものです。
だから私は、作品説明文(ステートメント)を書く時間も、作品制作の最後の工程だと考えています。
作品そのものは完成していても、その作品を他の人に伝えられる形にするまでが制作だと思っています。
私は英語からステートメントを書くことがあります
ステートメントは必ず英語版も用意するようにしているので、急ぎでなければ、まず英語版から書くことが多いです。
以前は日本語で文章を書いてから英語に翻訳していました。
しかし、日本語から書いてしまうと、文章が難しくて複雑になりやすく、そのまま英語に訳すと、自分でも読めないような難しい単語や言い回しになってしまうことがありました。
そこで最近は、まずシンプルな英語でステートメントのひな形を書いて、その後で日本語に直しています。
私は、できれば中学生くらいでも読めるような、分かりやすい文章を書きたいと思っています。
英語版から考えるようになってから、そのことを以前より意識できるようになりました。
また、海外の展示では、英語や中国語で作品について質問されることもよくあります。その際は、自分で書いたステートメントを見ながら説明することもあるため、自分自身が読めない単語や複雑すぎる文章では困ってしまいます。
だから私は、翻訳のためだけではなく、自分自身が自然に説明できる言葉で書くことも大切にしています。
AIは文章を書いてくれる魔法の道具ではない
最近はAIを使って文章を書く人も増えてきました。
そのため、「AIに頼めばステートメントも簡単に書けるのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、実際にはそんなに簡単ではありません。
AIは、膨大な情報をもとに文章を組み立てています。
そのため、何も情報を与えずに文章を作ってもらうと、一般的で無難な内容になりやすいです。
当然ですが、AIは作品を制作した時の自分の考えや経験までは知りません。
だから、作品のコンセプトやステートメントは、まず作家自身が考える必要があります。
AIは相談相手として使う
私自身は、まず自分でステートメントを書きます。
作品のコンセプトや制作意図は、自分で考え、自分の言葉で文章にします。
その後、その文章をAIに読んでもらい、
「もっと分かりやすくできる?」
「この流れの方が自然かな?」
「アートに詳しくない人にも伝わる表現になっているかな?」
と相談することがあります。
英語に翻訳する時も、私はネイティブらしい難しい表現よりも、ネイティブではない人が書いたことが分かるくらいのレベルの、自然で分かりやすい英語を目指していて、その方向性に合わせてAIと一緒に調整しています。
つまり、AIに作品を説明してもらうのではなく、自分が書いた文章をより伝わりやすく整える編集者や相談相手として使っています。
続けて使うことで、より良い相談相手になる
もう一つ感じているのは、AIは一度だけ使うよりも、継続して使った方が力を発揮するということです。
例えば私の場合、作品や展示について長い間相談を続けているため、私がどのような作品を作っているのか、どのような文章を好むのかを踏まえた提案をしてくれるようになりました。
もちろん、最後に文章を決めるのは私自身です。
でも、一から毎回説明する必要が減るので、制作の良い相談相手になっています。
私はAIを「答えを出してくれる機械」ではなく、「一緒に考えてくれるパートナー」として使っています。
最後に決めるのは作者自身
AIはとても便利な道具ですが、作品のコンセプトや作者自身の経験を作ることはできません。
だから私は、まず自分で考えることを大切にしています。
その上でAIを活用すると、自分だけでは気付かなかった表現や、新しい視点に出会うことがあります。
創作の主役はあくまでも人間です。
AIは、その創作を支えてくれる心強いパートナーなのだと思います。
次回は、「プレスリリースと広報」について書いてみたいと思います。


