通常アーティストを陰で支える人々というと、ギャラリーのオーナーやスタッフやらアート業界の人達を指すことが多いのですが、今回はもっと目立たない人々の事を書きます。
去年中国の蘇州に1ヶ月間アーティストインレジデンスに行った時、私のアトリエを含む建物全体の掃除をしてくれていた掃除のおばさんがいました。
ある日、私がアトリエでひたすら布にハトメを打っていたら、「それ一つ作ったら給料いくらもらえるの?」と聞かれたので、「アーティストだから作品が売れたらお金が入るけど、売れなかったらお金にはならないよ。」と言ったら、「お金にならないのにこんな細かい作業を!!!」と、すごく衝撃を受けたようでした。
しかも、同情されたらしくその後からすごく親切にしてくれるようになり、レジデンス最後の展示の設営中もつきっきりで掃除と片付けをしてくれる感じに。
そして、設営が終わった後、掃除のおばさんが「すごく綺麗!ホントに綺麗!」と言いながら私の作品をバックに自撮りをしているのを見て、すごく感激して作品作ってホントに良かった!と思いました。
この設営の時はインスタレーション用に竹を組んだので、手伝いの人(山東省から出稼ぎに来ている人でした)にも来てもらったのですが、この人も作品の準備で疲れきった私を「作品綺麗だから大丈夫!」と励ましてくれ、何だか嬉しかったのを覚えています。
更に、去年の夏に台湾の台中で展示した時、実は設営に行った時まだ内装が終わって無く、とにかく内装作業が行われる傍らで設営を進めていったのです。
私は天井から作品を吊るしたので、現地のスタッフと内装工事の人に手伝ってもらいました。しかし、その中の1人が内装作業中に怪我したらしくヒザが切れて血が出ている状態で、みんな心配して休むように言ったのに、「大丈夫!」と作業を続けてました。しかも、「この作品綺麗だねー」と気を使ってくれて、怪我してるのに何て親切なんだろう!と思いました。
中国では展示の設営とかギャラリーや美術館が人を雇ってくれる事が多いのですが、いつもアートに全く興味の無い人が来るので、それが逆に面白いのです。
アーティスト活動をしていると、ギャラリーのオーナーやら評論家やらいわゆる「権威のある人」に作品を評価される事を目指してしまいがちです。
でも、美術館なんて生まれてから一度も行った事がないかもしれず、アートなんて全然興味ない人に作品を見て素直に喜んでもらえるのも、また格別の嬉しさがあるし、より多くの人に支えられているのを感じる事が出来ます。
そして、そういう時に中国語が話せて良かった!と思うのでした。