今まで作品を展示してきた中で、作品を購入する方はわりと即決で、作品の説明文は見ない傾向があるなと感じていました。
これはつまり、作品を見ただけで、作品の背景を理解できる要素があったという事なのだろうか?というようなことを常々考えていました。
そして、最近「という本の中に以下のような記述を発見し、そういう事か!と腑に落ちたのでした。
そもそも、実体が伴っているとき(生きているとき)だって、〝存在〟は、他者の脳(五感)を通して初めて発現する。だとするなら、実体を伴わずとも、人に気配を感じさせ、思いを起こさせるならば、それは、存在しているのとなんら変わらない。実体のあるとなしとにかかわらず、他者の脳になんらかの神経信号を誘発する、存在の波動。人類は、長らくそれを「魂」と呼んできたのではないだろうか。あるいは「霊」などと。
芸術家は、その神経回路に起こった波動を表出させることで、作品をかたち作る。その芸術家に神経回路構造が似ている人の脳は、その作品に触発されて、類似の脳波を起こす。作品に魂がこめられ、作品に魂を感じる、とは、そういうことなのではないだろうか。
つまり、作品を作った本人と似た脳の持ち主は、作品を見ただけで直感的にコンセプト等を感じ取ることが出来るという事なのかな?と思いました。
作品を作った本人と似たような趣味嗜好、似たような経験をした事がある人が、直感的に作品を理解してくれる、という事かも知れません。
そう考えると、作品の展示というのは自分と似た脳の持ち主と出会える場なのかな?と思い、今後展示をするのが楽しみになって来ました。
しかし、現代美術ではやはりコンセプトを説明する事は重要で、特に日本では、ギャラリーなどでの展示の際にアーティストが展示会場にいて直接作品の説明をするのが望ましいとされています。
更に、アーティストが会場にいた方が作品が売れ易いからいて欲しいと言われる事もありますが、統計学的にそういうデータがあるわけでは無いので、アーティストがいた方が作品が売れ易いという説は、いまいち根拠に乏しいと私は思っています。
海外での展示の場合、通常アーティストはオープニングパーティーの時しか展示会場にいないし、それ以外の日にいて欲しいと要求される事も無いです(別に居たいのなら居てもいいけど、どちらでも良い感じ)。
この違いに対して、私は今までずっと困惑してましたが、これからは自分と似た脳の人に出会える機会だと思えば、展示会場に楽しく居ることが出来る気がしてきました。
「の本は流行が切り替わるサイクルを脳科学の観点から説明していて面白かったので、興味のある方は是非読んでみて下さい。