「広東国際芸術週」での展示を振り返って

「広東国際芸術週」での展示を振り返って 現代美術, 志村英美, シムラヒデミ, hidemishimura, fiberart, contemporaryart Hidemi Shimura

広州にて巨大なぬいぐるみのインスタレーションと、平面作品を展示し、設営のため現地にも行ってきましたので、そのレポートを書きます。

その前に、私のバックグラウンドについて説明しますと、前に7年くらい上海に住んでたことがあるので、流暢ではありませんが中国語と英語は話せます。展示に係るやりとりや、設営の指示出しなども自分で行えますし、予想外の急な変化などにも対応できる臨機応変さも身に着けています。なので、たぶん中国にあまり慣れてない人に比べたら、展示の際のストレスに対して鈍感なのかな?とは思います。

まず、展示会場に着いて驚いたのが、イベントは東京ビッグサイトのような展示スペースにて開催されたので、各スペースをパネルで区切るというブース式展示だったのですが、壁の高さが4メートルくらいあったのでびっくりしました。

「広東国際芸術週」での展示を振り返って 現代美術, 志村英美, シムラヒデミ, hidemishimura, fiberart, contemporaryart Hidemi Shimura
人と比べてみて、壁が高いのが分かると思います

搬入口に積んであったパネルを見たら、私が見慣れているパネルの1.8倍くらいのサイズがあり、1枚1枚が重そうでした。あれを1枚1枚立てていくのには相当な労力が必要で、中国は高齢化が進んでいるといってもまだまだ労働力があるのだなあ、と思いました。

あと、通常ブース式展示だと、ライトがあまり動かせなくて照明がいまいちになってしまうのですが、今回は下の写真のように、ライトレールが飛び出して付けられていて、壁からある程度の距離から当てられ、位置や角度の自由度が高く、追加も可能という感じになっていました。

「広東国際芸術週」での展示を振り返って 現代美術, 志村英美, シムラヒデミ, hidemishimura, fiberart, contemporaryart Hidemi Shimura

壁が高いと高所作業が大変なのですが、スタッフが大勢いたので、それはやってもらえたので助かりました。今回のイベントは、若いスタッフが非常に多くて、若いとやはりフットワークが軽くていろいろ頼めるのが良かったです。

設営完了後は、下の画像のような感じです。イベント全体のキュレーターである彭文斌氏の判断で巨大ぬいぐるみのインスタレーションを展示することになりました。普通こういうインスタレーションはあまり展示の機会がないので、最初にこれを展示したいと聞いたときは正直驚きました。
インスタレーションなので、自分で設営する必要があるためそのために現地に行った次第ですが、高いところから物を吊るすのはやってもらいました。ただ、脚立の順番待ちとか、スタッフの手が空くのを待つとか、待ち時間が結構あって、結局設営が終わったのは夜でした。ただ、展示会場に5つ星ホテルが併設されており、その中に気楽に入れそうなカフェスペースがあったので、そこでコーヒーを飲みながら休んで待っていました。

「広東国際芸術週」での展示を振り返って 現代美術, 志村英美, シムラヒデミ, hidemishimura, fiberart, contemporaryart Hidemi Shimura

あと、私の平面作品の一部が会場で行方不明になって、探してもらって結局見つかったのが夜7時で、それから大急ぎで自分で設営しました。通常平面作品の設営もスタッフにやってもらえるのですが、そんなことを言っている場合ではなかったので、自分でやってしまいました。
後から振り返ると、壁が高いので作品もう少し散らばせて数を増やすこともできたかも?と思いますが、作品行方不明事件があったので考える余裕がなかったな、と思います。

同じイベントの出展作品の中で良い作品はたくさんあったのに、あまり写真を撮らなかったのですが、下の画像は私が良いと思った作品達です。SNS映え用に可愛い系のパブリックアートなどはありましたが、主催者の意向なのか?出展作品は技術力を重視しているものが多く、かわいい系の作品はあまりありませんでした。出展作家も若手から巨匠まで、年齢が幅広かったです。

「広東国際芸術週」での展示を振り返って 現代美術, 志村英美, シムラヒデミ, hidemishimura, fiberart, contemporaryart Hidemi Shimura


下の画像は、エントランスなどの広いスペースに展示されていたパブリックアート的なものです。こちらは全体的にかわいい感じです。
左側のくま?は高さが5メートルくらいで、中に空気が入っていて持ち運べるようになっているのですが、販売価格が日本円で30万円くらいで、ということは制作費はもっとかかっていないという事で、こういうのを作りたいと思っているアーティストや企業にとってはとても良いかもしれないと思いました。

「広東国際芸術週」での展示を振り返って 現代美術, 志村英美, シムラヒデミ, hidemishimura, fiberart, contemporaryart Hidemi Shimura

去年は入場者数8万人だったそうですが、今年は毎日雷雨だったので、もっと少ないかな?と思います。不景気だし、毎日雷雨だったので期待出来ないと思ったのですが、驚いた事に作品結構売れてました。 各アーティストや常連のお客さん毎に担当スタッフが決まっていて、会場の案内や作品の説明をちゃんとしていたので、販売に繋がっているようでした。

かただ、結構売れているアーティストと全然売れていないアーティストの差があって、それは何だろうと観察してみると、どうやら売れていたのは1M以内くらいの小さめサイズがメインでした。 最近は消費のターゲットが、富二代(フーアータ)紅ニ代(ホンアータイ)と呼ばれる、裕福な親を持つ若い世代に消費のターゲットが移ってきているので、お手頃なサイズが好まれるようです。大きいサイズばかり展示していた人は中々売れなくて苦戦していたようです。なので、幅広い作品のサイズを揃えておくことは大切だと感じました。

あと、前から海外で展示するときは(中国以外でも)例えば何点かまとめて購入する場合とか、値切ってくる人が結構いるのですが、不景気なせいか、更に値切り交渉が激しくなってるかもしれません。交渉の対応はスタッフの仕事ではあるのですが、アーティスト側もそれを踏まえたうえで対策が必要そうです。

作品が一時行方不明になるアクシデントはありましたが、久しぶりの海外での展示で体力に不安があったのですが、スタッフ達が色々手伝ってくれたし、展示会場にずっといなくても大丈夫と言われてたので、体力的負担が少なく、わりとストレスの無い展示でした。

今回現地で色々な作品を見て感じた事は、私を含めミクストメディア系の作品は、複数の素材を組み合わせているので作品がなんとなくカッコよく見えてしまうのですが、やはり技術力は大事だなと感じました。例えば、作品の一部にペイントをする、などの場合でもやはりクオリティは高くないとダメだなと思いました。そういう意味で、もっと画力を鍛えるとか、技術力を上げていく努力は必要だし、それが何年、何十年後に作品の質の差に繋がりそうだ、と改めて気づきました。

 

「広東国際芸術週」での展示を振り返って 現代美術, 志村英美, シムラヒデミ, hidemishimura, fiberart, contemporaryart Hidemi Shimura
沙面島の洋館

広州の街について、不景気だと言われていますが、街の雰囲気では、活気がありそれほど不景気には感じませんでした。
広州は歴史のある建物も多く、独特の食文化もあり、文化・歴史的にとても奥深い街だと感じました。あと、何といっても果物が豊富で、その場でジュースを作ってくれるお店もたくさんあったりと、健康的でした。それらについても、また他の記事に書こうと思います。

実はトランジットで一晩だけ上海に寄ったのですが、上海の方がどちらかというと活気がない印象でしたし、友人たちも不景気だと言っていました。上海の場合は、外国人がかなり減ってしまったのが結構痛手になっているような気もします。元々、外国人、特に欧米人は家賃の高い家に住み、飲食など日常生活にもお金をかけるので、外国人が減ってしまうとその分消費が減ってしまいます。
また、外国人が作品を見に来てくれたり購入してくれることも多かったので、アート業界にも影響はあると思います。上海は、私にとっては第2の故郷でもあり、大好きな街なので、今後が心配です。ビザ無しで渡航できるようになって、気楽に行けるようになったので、上海近郊もまたゆっくり行ってみようかと思います。

今回展示した、巨大ぬいぐるみのインスタレーションは、7月末の個展でも展示します。
展示の詳細を載せたページを公開しました。まだ先ですが、是非見に来てください。
とりあえず、インスタレーションの外皮は一旦洗濯をして、綺麗な状態で皆様をお迎えしようと思います。

現代美術作家 シムラヒデミ
主に刺繍糸を素材に作品を制作するアーティスト。大学でファッションデザインを専攻、卒業後3DCG制作の仕事に就く。
2005年より現代美術作家としての活動を開始。デビュー直後にパリで個展を開催する等順調に海外での活動を広げる。2006年より社員旅行をきっかけに好きになった街、上海へ移住。それほど長く住むつもりではなかったものの、リーマンショックによる画廊閉鎖など予想外の展開に翻弄され、7年近く住んでしまう。
2013年12月日本帰国、埼玉県所沢市在住。引き続き現代美術作家として活動。現在、2025年のアーティスト活動20周年の為に作品を作り溜めている。

このブログではアート・文化・歴史に関する考察、自身の活動報告等を投稿しています。
記事一覧 Website Instagram