先日4月末からの横浜での個展の打ち合わせをしながら、千葉市立美術館の小沢剛展、六本木のアートコンプレックスのギャラリー色々、森美術館のレアンドロ・エルリッヒ展を回りました。
横浜の展示の打ち合わせを千葉でやるのがちょっとめちゃくちゃで面白いと思いましたが、実際展示を見ると色々アイディアが浮かぶので、美術館で仕事の打ち合わせとかいいんじゃないでしょうか?
小沢剛展やレアンドロ・エルリッヒ展については他に多くの人が感想を書くでしょうから、それ以外の小さい展示の中で印象に残ったShugoartsでの藤本由紀夫展「STARS」についてちょっと書いてみます。
オルゴールの回すねじの部分が3つ付いた縦長の箱が並んでいて、パッと見では?????という感じです。ギャラリーの方の説明によると、ねじは自由に回して良いとの事、箱の中にはある曲のオルゴールが入っているがそれぞれ一音ずつしか鳴らないように細工がされている。人がねじを回して音を鳴らすことにより、毎回違う即興の音が流れる。
人の脳というのはある音を聞いたときに無意識に自分が今まで聞いたことがある曲と関連づけてしまうように出来ており、オルゴールから流れる即興の音に対しても知っているフレーズと重ね合わせようとしてしまうとの事。
そして、展示のタイトルの「STARS」は、展示の説明文によると「タイトルの STARS は夜空に浮かぶ一つ一つの星をつなぎ合わせ星座の物語を作った人間の視覚認識に基づいており、1 音ずつランダムに発生する音を頭の中で和音に構成しなおし、パターンやメロディーとして聞かずにはいられない人間の聴覚の可能性を示唆します。」とあり、星から星座を作り、一つ一つの音から音楽を作る人間の想像力に対する敬意が込められているのではないかと思います。
一つ一つの音の集合と聞いたことがあるフレーズを重ね合わすというと「100台のメトロノームのためのポエム・サンフォニック(Poème Symphonique for 100 metronomes)」をちょっと思い出します。
前回渋谷で行われたジェフ・ミルズ&オーケストラのコンサートでこの曲が演奏され、実際はたくさんのメトロノームが音を立てているだけなのに、ある時は雨音に聞こえたり、ある時はアフリカの民族音楽のようなリズムに聞こえたり、聞く人によって変化する不思議な曲なのです。
結構長い曲で、最初はただのうるさいバラバラの音に聞こえますが、ずっと聞いていると何かが聞こえてきます。
その前のジェフ・ミルズ&オーケストラのコンサートでは、ジョン・ケージの「4分33秒」が演奏?され、静かにじっとして音を立てないようにしてないといけないのかな?と思い、なんだかそわそわと落ち着かない気分でした。ただ、音を立てないように努力するという点において、会場内に妙な一体感が漂っていた気がします。