2年前の事ですが、展示でパリに行った時に訪れたケ・ブランリ美術館の事を書いています。3回目は「Black Indians from New Orleans」展についてです。
ニューオリンズのマルディグラという大規模なカーニバルには、マルディグラ・インディアンと呼ばれる38の部族(トライブ)からなる派手な衣装を身に着けたアフリカ系アメリカ人たちも参加します。その衣装は、ネイティブアメリカンの伝統的な衣装のように、羽やビーズや刺繍などにより過剰な装飾が施されています。この展示ではマルディグラ・インディアンのパレード衣装の展示により彼らの文化的背景に触れ、更に黒人差別とそれに対する抵抗の歴史を振り返る、という内容でした。まず私はその衣装の美しさに魅了され、展示の内容について興味を持ちましたが、説明がほとんどフランス語でよく分からなかったので、帰ってからもっと詳しく調べてそれについて書こうと思っていたのですが、結局2年が過ぎてしまいました。
まず、展示のタイトルにもなっている「ブラックインディアン」という呼称とマルディグラ・インディアン誕生の背景について、ニューオーリンズ周辺のネイティブアメリカン部族としては、ヒューマ族(Houma)、チョクトー族(Choctaw)、チカソー族(Chickasaw)などが挙げられます。これらの部族が、逃亡したアフリカ系アメリカ人奴隷を保護し、彼らと共に生活し、文化を共有したという歴史的背景があります。保護されたアフリカ系アメリカ人達は誇りを込めて自らを「ブラックインディアン」と名乗るようになったとのことです。この呼称には、彼らの祖先に対する敬意と、抑圧に対する抵抗の象徴という意味も込められています。
更なる説明の前に、まずは、展示風景の写真をお楽しみください。(クリックすると大きな画像が表示されます)
コスチュームについて
マルディグラ・インディアンのコスチュームは、手作業で作られる豪華でカラフルなもので、1年かけて制作されます。ビーズ、羽根、刺繍が施された布地などを用いたこれらのコスチュームは、デザインや色にそれぞれ深い意味が込められています。近年の材料費の高騰が問題になっているそうです。コスチュームは毎年新しいものを作りますが、解体した羽やビーズは可能な限り再利用されるそうです。コスチュームを博物館やコレクター向けに販売する事もあるそうです。
マルディグラ・インディアンの部族について
マルディグラ・インディアンの各部族には「ビッグチーフ」や「フラッグボーイ」など、それぞれの役割があります。
「ビッグチーフ」は部族のリーダーであり、パレードの中心的存在で、各コミュニティにおける尊敬される長老や指導者であることが多く、一番豪華な衣装を身にまとってパレードに参加します。
「スパイボーイ」偵察役として部族の数100メートル先を歩き、障害物や他の部族の接近をフラッグボーイに知らせます。
「フラッグボーイ」はパレードの先導役であり、ビッグチーフや他の部族員に対して警告や指示を出す役割を担い、パレードの進行を円滑にするために、重要な役割を果たします。
各部族のルートは事前に公表されないため、部族同士が遭遇する事があり、遭遇すると「バトル」が始まります。
他の部族との遭遇と「仮想バトル」
実際の暴力的な争いではなく、伝統的な儀式として行われるパフォーマンスです。このパフォーマンスは「仮想バトル」とも呼ばれ、ダンス、歌、チャント(詠唱)などを通じて行われ、部族間の誇りと伝統を表現するものであり、力と技術を見せ合う場でもあります。部族間の競争と友情の象徴として行われます。
19世紀後期~20世紀初頭、実際に部族間の暴力による抗争が行われていた荒れた時代もあったそうですが、暴力的な争いは行われなくなり、パレードにおけるパフォーマンスとしての「仮想バトル」に変化したそうです。
マルディグラカラー
マルディグラカラーである紫、緑、金の3色は、それぞれ正義、信仰、力という意味を持ちます。パレードの山車からは3色のビーズで出来たネックレスやおもちゃが大量にばら撒かれ、人々は争うようにそれらを受け取ろうとします。
注:マルディグラ・インディアンのパレードには山車は使われず、徒歩によって行われます。ルートも山車が通る大通りを避け、裏通りをメインに移動するそうです。
まとめ
色々調べてみましたが、実際にニューオリンズに行ってカーニバルを見てみないと全然分からない!と思いました。
ニューオリンズのマルディグラに興味を持たれた方は是非行ってみて下さい!
最後に展示会場の動画を少し載せます。