上海での作品販売の動向 上海アート情報2018-1

上海での作品販売の動向 上海アート情報2018-1  Hidemi Shimura

私が滞在しているアーティストインレジデンスはスペイン系のギャラリーが運営していて、結構アジアのアーティスト(日本も含む)の作品をヨーロッパのアートフェアに持って行ったりしているギャラリーです。
スタッフから最近の動向について聞いたところ、「最近はヨーロッパでも作品はなかなか売れない。上海ではアートフェアでは作品が本当にたくさん売れるけど、ギャラリーではそうでもないというか、ギャラリーによってばらつきがある。」とのことで、どうしてアートフェアでは売れるのにギャラリーではそうではないのか聞いたところ、「ギャラリーでは作品の質がバラバラで、良い作品もあるけど質の低い作品もたくさんあるので評価が一定しないけど、アートフェアだったら質の高い作品が売られているからみんな安心して買う。」とのことでした。

どのアートフェアで作品が売れてるかと言うと、
ART021 http://www.art021.org/
WEST BUND ART & DESIGN http://westbundshanghai.com/index.php/English
Photo Fairs Shanghai https://www.photofairs.org/shanghai
の3つです。
これらは、出展ギャラリーの審査がしっかりしていて、作品の質も高く保たれているようです。
あと中国での美術品売買と言うと高い関税がネックになっていたのですが、これらのアートフェアではその点もクリアされているとの事。
※前に上海で行われていたアートフェア SH Contemporary では、作品が税関で止まってしまって搬入の日に間に合わないとか、高い関税がかけられてしまうなどの問題もあり、運営が難しくなって打ち切りになってしまったので、その時の反省を生かしたのではないかと思います。

この他に「上海アートフェア」というのもあるのですが、そちらは出展画廊の審査がなく、応募が早いもの順で参加できてしまうため、作品の質が低く、作品もほとんど売れません。
なぜか日本からの画廊が結構こっちに参加してしまうのですが、出展しても効果はあまりありません。

ギャラリーによってばらつきがあるとはいっても、話を聞いた感じでは、良い作品をコンスタントに取り扱っているギャラリーは売り上げが伸びているようです。上海はどんな業種でも生き残りが難しく入れ替わりが激しいのですが、上海の現代美術の黎明期(10-15年前)にオープンしたようなギャラリーは結構生き残っていて、とても安定した地位を築いています。
ギャラリー経営は一般的に最初の2-3年は非常に売り上げが少なく、安定するまでは数年かかると言われますが、やっぱりどの場所でもある程度年数をかけないと結果を出すのは難しいものなのかなあと思いました。

 

現代美術作家 シムラヒデミ
主に刺繍糸を素材に作品を制作するアーティスト。大学でファッションデザインを専攻、卒業後3DCG制作の仕事に就く。
2005年より現代美術作家としての活動を開始。デビュー直後にパリで個展を開催する等順調に海外での活動を広げる。2006年より社員旅行をきっかけに好きになった街、上海へ移住。それほど長く住むつもりではなかったものの、リーマンショックによる画廊閉鎖など予想外の展開に翻弄され、7年近く住んでしまう。
2013年12月日本帰国、埼玉県所沢市在住。引き続き現代美術作家として活動。現在、2025年のアーティスト活動20周年の為に作品を作り溜めている。

このブログではアート・文化・歴史に関する考察、自身の活動報告等を投稿しています。
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