マテリアル
糸、工事現場で拾った煉瓦とコンクリート、写真(紙にプリント)、アクリル絵の具、木製パネル
技法
写真を紙にプリントアウト→パネルにコラージュ→アクリル絵の具でペイント→パネルの内枠にネジを沢山付ける→ネジに糸を結び小さく砕いた煉瓦とコンクリートのかけらに結びつけ巻き付ける→それぞれの破片が糸によって繋がるまで繰り返す。
コンセプト
漢字の「人」という字は人と人が支えあっている姿を表していると言われている。しかし、私にとっては人々はそれぞれ引力を持っており大勢の人がお互い引っ張り合っているように思える。(作品の中の瓦礫の破片は人々、糸は人々の間の張力を表している。)特にせわしなく人々が現れては去っていく上海の街に住み始めてから更にそう感じるようになった。その引っ張り合う力は生きるのに必要なストレスであって、あちこちから引っ張られる事によって人々は宙ぶらりんな自分達の身を安定させているのだと思う。
しかし一箇所でその張力のバランスが失われると、糸が切れたり不恰好に緩んだりしてしまう。それはストレスや 過度な気の緩みとなり、人々の生活リズムを狂わせる。しかし、人々は再び人生の均衡を取り戻すために糸の修復を試みる。
そしてその糸は自分の身近な人々との繋がりから始まり、海を越え、全世界を埋め尽くす。地球全体が無数の網の目に包まれているところを想像すると気が狂いそうになるが、同時にとても美しい光景のようにも思えてくる。
作品の背景
このシリーズは私が上海に住んでいた時2008年に誕生したものです。私にとって上海という街は、外国人である私も含めて現れてはまたどこかへ消えていく人々を無条件に受け入れてきた懐の深い街であるが、それと同時にとても可哀そうな街であるように思えます。その上海への印象を形として残すためにこのシリーズは生まれました。作品には上海の取り壊された家のかけらを使っているので、上海でしか材料を得ることが出来ません。