先月ある現代美術のトークショーに行ったら、最後の質問タイムで若い版画家の女の子が、「ある人に版画は半画と言われるように芸術作品としては中途半端なのでやめたほうが良いと言われて、画家に転向しようか悩んでますがどう思いますか?」みたいな内容の質問があってすごく驚きました。
まず、版画は立派は芸術作品の1ジャンルであり、素晴らしい作品も沢山ありますから、決して半端な存在では無いですし、私も版画は大好きです。
確かに版画は一点物のオリジナル作品に比べてエディション数が多く希少価値は下がるのかも知れませんが、敢えてプリント数を少なくする事でオリジナル作品として制作する事も可能です。(棟方志功氏は摺った後の版に切り込みを入れてしまう事によって版を再利用出来なくしていました。)
何よりも「版画は半画」とか言っちゃう無神経さと、それを若い芸術家が聞いたらどう感じるかへの思いやりの無さに腹が立ちました。
幸い今回質問した女の子は、トークショーのコメンテイターさん達から「版画が好きなら版画を作り続ければいい、だけど、続けるのなら誰にも負けないくらい版画を突き詰めて行った方が良い。」というアドバイスを得て励まされたようなので良かったです。
若いうちは誰でも素直で純粋なので人の意見を信じてしまうものだろうと思うけど、作品を何年も発表していると、的はずれなアドバイスとか批評とか言ってくる人なんて山ほど会いますから、その度に一々間に受けて悩んでたら身が持ちません。
だから芸術家としてやって行きたかったら、自分の作品に対する揺るぎない自信、根拠のない自信が必須です。
と、いう訳で、私の年賀状は木版画にしてみましたが、やはり難しかったです。
版画には高度なテクニックが必要で、絶対に「半画」などではありません!