高飛車なアーティストはなぜ生まれるのか?という疑問

高飛車なアーティストはなぜ生まれるのか?という疑問 ただのメモ, アーティスト Hidemi Shimura

仕事柄ごくまれにとてもありえない態度の日本人アーティスト(ていうかアーティスト気取り?)に遭遇することがあって、最近もそういう事があってびっくりしました。さらにびっくりしたのは日本にはそんな若手アーティストは珍しくないって聞いてこれは由々しき事態!と思った次第です。あ、でも私が今まで遭遇したのは全然売れてない人ばかりだから、ちゃんとプロとしてやってる人たちはみんなちゃんとしてますけど。

勘違いアーティストにありがちなのが、「私ってすごい!私って特別!だから私と仕事したかったらこれくらいの条件は当然要求しますよ!」みたいな態度の人ですが、あれは一体何をどうしたらあんなに勘違い出来るんでしょうか?世界的に見ればあなたと同じレベル、いいえそれ以上の作品を作れるアーティストなど何千人、下手したら何万人もいます。展示したら作品がガンガン売れちゃう売れっ子アーティストならともかく、あなたの作品を飾るだけでどれだけのコストをギャラリーが負担しなければいけないのか想像したことがあるのですか?と言いたいです。

とはいえ、若いうちに作品がうっかり売れ始めちゃって高飛車になっちゃう人の気持も分かります。ですが、アート業界も次から次へと新しい人が誕生するし、大衆心理など移ろいやすいものですから、今売れてるからといって明日も必ず売れ続けるという保証はありません。いい気になって高飛車な態度をとっていると作品がちょっと売れなくなった時点で、待ってましたとばかりにエージェントから切られるでしょう。もし同じレベルのアーティストが2人いたら人柄の良い方が選ばれますから。

さらに今回なぜアーティストが調子に乗りやすいかを考えた所、なぜ日本ではアーティストが「先生」と呼ばれているのか、にも関係があるという結論に至りました。日本ではまだアーティストが単なる職業の一つだとは認識されておらず、なんかちょっと意味分かんない怪しい人と思われがちです。(というか私はそう感じています。)結果、臭いものには蓋をしろ的な発想で、もう芸術家なんてよく分かんないし「先生、先生」とか呼んで適当におだててごまかしておけ!みたいなノリもあると思います。そうじゃなくてもアートってなんか意味分かんないけどすごい!みたいな扱い受けることもありますよね。そんな感じで若いアーティストの中には勘違いしちゃう人も中にはいるのでしょうね。

かくいう私もアーティストなりたての頃順調だったので、あのままうまく行ってたら今頃すごく高飛車な人だったかもしれない!と思うと背筋が凍る思いです。むしろまだ若いうちに不景気を味わっておいて良かったわ!と思います。ちなみに、なぜか私も「先生」と呼ばれてしまう時がありますが、あれは本気で嫌なのでやめて欲しいです。今度から「先生」と呼ばれたら断固無視します!

※ちなみに高飛車の由来は将棋の飛車から来ているそうです

現代美術作家 シムラヒデミ
主に刺繍糸を素材に作品を制作するアーティスト。大学でファッションデザインを専攻、卒業後3DCG制作の仕事に就く。
2005年より現代美術作家としての活動を開始。デビュー直後にパリで個展を開催する等順調に海外での活動を広げる。2006年より社員旅行をきっかけに好きになった街、上海へ移住。それほど長く住むつもりではなかったものの、リーマンショックによる画廊閉鎖など予想外の展開に翻弄され、7年近く住んでしまう。
2013年12月日本帰国、埼玉県所沢市在住。引き続き現代美術作家として活動。現在、2025年のアーティスト活動20周年の為に作品を作り溜めている。

このブログではアート・文化・歴史に関する考察、自身の活動報告等を投稿しています。
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