アーティストへのクラウドファンディングのススメ

アーティストへのクラウドファンディングのススメ  Hidemi Shimura

今回は今年クラウドファンディングを2回行った(1回は自分だけで、2回目は大勢のアーティスト達と)ので、その時もっとこうすればよかったとか始める前の準備はこうするとおススメといった内容の事を書きます。

もともとクラウドファンディングを自分がやるとは思っていなかったので、最初にやるかどうかは結構迷ったのですが、やってみるとなかなか面白いです。支援してくれた方が個展を見に来てくれたりもするので、人とのつながりも生まれます。

元々私自身の考えとしては、今の世の中解決すべき問題は他に山積みで、お金があるならアートよりも他の事を先に支援するべきだと思っていて、あまり助成金などに頼ってアーティスト活動をするのは好きではありません。あと、私はデザイン専攻だったのでデザイナーとしてのスキルもあり、働いてお金を稼ごうと思えば稼げるため、人からお金を出してもらう事への罪悪感というものもあったと思います。

しかし、よく考えるとクラウドファンディングというのは支援へのリターンとして何らかのものを提供するわけですから単なる資金援助とは違いますし、主に支援者は私の活動内容に興味を持った個人の方々なわけですから、公共のお金を助成金として使用するのとは違って罪悪感も感じなくて済むという事に気づきました。

以下、用意するものとこうしておくと良いと思ったことのメモです。こういうのは本人も時間がたつと忘れたりするので、もし今度またクラウドファンディングを行う場合のための自分自身への備忘録でもあります。

用意するもの

プロジェクトのプレゼン用文章や画像等 プロジェクトの内容の説明、なぜ支援が必要なのか等、支援を呼びかける文章。他の人はどんなものを載せているのかを見て参考にすると分かりやすいです。

クラウドファンディングの紹介ページの一番上に載せるムービー 
ムービーを載せる欄があるので、何かしら映像を作って載せる必要があります。私は前CG制作の仕事をしていたので急ぎで自分で作ってしまいましたが、通常撮影や人に頼んで制作したりする期間も含めると最低2週間くらいは制作にかかると思います。

リターンのリスト
一番低価格なもので3千円くらいから幅広い支援額の多数のリターンを用意します。写真が無い場合は写真も撮影して用意します。実は送料も結構かかるので、それも見越したうえでリターン額を設定します。

クラウドファンディングのサイトに載せる
自分のアカウントで新しいプロジェクトを投稿して、各項目をひたすら記入し画像もアップロードして公開が出来るように準備をします。
準備が出来たら公開を申請します。クラウドファンディングの運営会社の審査があり、審査を通ったら公開という流れになります。

準備期間について

予想外に時間がかかります、もしクラウドファンディング用に作品やグッズ等新たに用意するのなら、最低1か月は準備にかけた方が良いです。
専用に何かグッズを新しく作ろうと思った場合、何を作ろうか考えるのにも、試作品を作るのにも結構時間がかかります。
手持ちの作品の中から選ぶ場合も、どれをリターンとして出すかを決めて、リストを作成するのにもなかなか時間がかかります。
私は展示のための作品制作と並行して準備を行ったので、とても大変でした。特にグッズは普段からどんなものを作りたいかをもっと考えておけば良かったと思いました。

グッズについて

これは作品のタイプによると思うのですが、私の作品はたとえばTシャツやトートバッグ等には不向きで、マグカップとかクリアファイルなら合うだろうという感じで、グッズによって合う合わないがあるので決める時に迷いました。あと、グッズ制作には費用もかかりますので、それを踏まえた上でグッズの選択と、いくらのリターンとして出すのかを決める必要があります。
しかし、私の場合、実際はグッズよりも作品実物をリターンとして選んだ方が多かったです。
グッズで一番人気があったのはバッグだったのですが、これは私の手作りなので、結局私は普段作っているのが細かいハンドメイドの作品なので、やはり手作り的な要素が求められているのでは?という事が分かりました。

アーティストへのクラウドファンディングのススメ  Hidemi Shimura

リターン作品について

手元にある作品の中からリターンとして提供が可能なものを選ぶわけですが、基本的にクラウドファンディングではギャラリーで販売している価格より割安な価格を設定する事になるため、旧作を出すことをおすすめします。旧作と言ってもあまり古すぎるのものを在庫処分セール的に出すのはダメで、3-4年以内に制作したものが良いと思います。

それ以外に、最新作を目玉商品として提供するのもお勧めです。例えば、個展の費用のためのクラウドファンディングだったら、個展に出すのと同じシリーズの作品を数量限定で、個展で販売するより少しだけ低価格で提供する等です。

小さい作品から大きい作品まで、幅広い大きさのものを用意する事をお勧めします。通常は小さい作品がリターンとして選ばれますが、大きい作品が選ばれる事もあるので、一応大きい作品も出しておいた方が良いです。

たとえば、シリーズ作品の内の1点だけを例として掲載し、これと同じ大きさで同じ感じの新作を制作してお渡しします、というような感じで掲載する事が結構あるのですが、その場合やはり選んでくれる方が少なくなってしまうので、作品は事前に実物を制作し、実物の写真を1点1点載せるのが望ましいです。

宣伝について

多くの方から支援してもらうために、プロジェクトをSNSで頻繁にシェアしたり、メールを出したり、色々宣伝を頑張る必要があります。
あと活動報告を投稿する欄があるので、例えば個展の準備の進み具合とかプロジェクトの進捗状況等を時々投稿する必要もあります。

私はSNSも苦手で宣伝も得意ではないので、これに関しては、普段作品を扱っていただいているギャラリータグボートに完全にサポートしてもらい、Facebookでのシェアや、メルマガでの支援呼びかけ等をしていただきました。
元々クラウドファンディングをしたのも、タグボートのオーナーさんに個展のために大きい作品を制作するのでアーティストインレジデンスに行くと伝えたところ、「それならクラウドファンディングしてみる?」という話になったのがきっかけです。

審査があるので誰でもというわけではないですが、クラウドファンディングのサポートを受けてみたいアーティストの方は是非ギャラリータグボートに問い合わせてみて下さい。

自分はSNSも大得意だしファンもたくさんいるからサポートは無しでも大丈夫そうというアーティストの方も、もし何か資金が必要な事になったら是非クラウドファンディングをやってみて下さい。
一部のクラウドファンディングに理解のない人が否定的な意見を言ってくることもあると思いますが、私のまわりではそういう人は思ったよりも少なかったですし、何か言われても別に気にする必要は無いと思います。1回やって慣れてしまうと意外と簡単ですし、案ずるより産むが易しです。

 

 

現代美術作家 シムラヒデミ
主に刺繍糸を素材に作品を制作するアーティスト。大学でファッションデザインを専攻、卒業後3DCG制作の仕事に就く。
2005年より現代美術作家としての活動を開始。デビュー直後にパリで個展を開催する等順調に海外での活動を広げる。2006年より社員旅行をきっかけに好きになった街、上海へ移住。それほど長く住むつもりではなかったものの、リーマンショックによる画廊閉鎖など予想外の展開に翻弄され、7年近く住んでしまう。
2013年12月日本帰国、埼玉県所沢市在住。引き続き現代美術作家として活動。現在、2025年のアーティスト活動20周年の為に作品を作り溜めている。

このブログではアート・文化・歴史に関する考察、自身の活動報告等を投稿しています。
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