誘拐・人身販売についてのドキュメンタリー「Living with dead hearts」

誘拐・人身販売についてのドキュメンタリー「Living with dead hearts」  Hidemi Shimura

The Nuts Lab上海ではよくミニフィルムフェスティバルや映画上映会が開かれていて、時々行きます。
今回は中国の子供の誘拐・人身販売についてのドキュメンタリー「Living with dead hearts」を見てきました。
リンク先で本編を見ることが出来ます。

誘拐された子供たちがどこに行くかというと、いくつかのパターンがあり↓

男の子を欲しがっている農家に養子としてもらわれる。仲介人が費用(2000元くらい)をもらう。
(農村では一人っ子政策は緩和されているので子供を複数持つ事は許可されています。しかし、農村ではやはり働き手・跡継ぎとしてまだまだ男の子を望む傾向が強いので、女の子しか生まれなかった場合養子を望む事もあるようです。)

小さい子供たちはストリートチルドレンとなり物乞いをさせられ、収入は親方に集められる。
(マッチ売りの少女みたいな話ですが未だに行われています。)

ある程度の年齢になった子供たちは、工場や工事現場などに連れて行かれ、逃亡できないよう厳重な監視下できつい労働をさせられる。女の子の場合は売春をさせられる事もある。
(映画では15歳の農村出身の息子が誘拐される事件が出てきましたが、そんなに大きくなってからでも誘拐される事があるのか?と驚きました。)

ごくまれにまだ生まれて間もない赤ん坊の場合は海外に養子にもらわれていく事もある。(この場合も仲介人が手数料をもらう。)

などのパターンがあります。

たいていの場合、警察もあまりまじめに捜査をしてくれず、誘拐後は自力で帰れない様にとても遠くに連れて行かれるので見つける事はなかなか難しいようです。

たった2,000元(約32,000円)のために人が誘拐されるということ自体信じられないかもしれませんが、農村では2,000元は結構大金です。

前に上海で家政婦さんとして働いていた農村出身のおばさんから聞いた話だと、出身地での現金収入は月々200元(約3,200円)くらいで不作の時は食べるものもない時もあるので近所に食べ物をもらいに行く事もあると言っていました。これと似た話は時々聞くのでどこも似たような状況かもしれません。

こういう話を聞いてほら中国ってすごくひどい国でしょう?というのは簡単です。
でも、当然ながら私たちの日々の暮らしは海外(特にアジア)の安い賃金で働いている労働者たちがいるおかげで色々なものが安く買えるという部分がもちろんあるわけで、ひょっとすると強制労働させられた児童が作った物だって買っちゃってるかも知れません。
そう考えると完全に他人事であるとは言えないのです。

 

現代美術作家 シムラヒデミ
主に刺繍糸を素材に作品を制作するアーティスト。大学でファッションデザインを専攻、卒業後3DCG制作の仕事に就く。
2005年より現代美術作家としての活動を開始。デビュー直後にパリで個展を開催する等順調に海外での活動を広げる。2006年より社員旅行をきっかけに好きになった街、上海へ移住。それほど長く住むつもりではなかったものの、リーマンショックによる画廊閉鎖など予想外の展開に翻弄され、7年近く住んでしまう。
2013年12月日本帰国、埼玉県所沢市在住。引き続き現代美術作家として活動。現在、2025年のアーティスト活動20周年の為に作品を作り溜めている。

このブログではアート・文化・歴史に関する考察、自身の活動報告等を投稿しています。
記事一覧 Website Instagram