暗号資産(仮想通貨)で作品を取り扱われそうになったらどうすればいいのか?

暗号資産(仮想通貨)で作品を取り扱われそうになったらどうすればいいのか? 現代美術, 暗号資産, 仮想通貨詐欺, 仮想通貨, ブロックチェーン Hidemi Shimura

アーティストの皆さん、もし突然作品を扱っているギャラリーのオーナーから「今度から作品を仮想通貨で販売することにしたから、作品の売り上げも仮想通貨で支払いでいいか?」と聞かれたらどうしますか?

たいていの人が「え?何それ?急に言われても困るんですけど!」と思って混乱するでしょう。今回は、私が実際目にした出来事を基にそういう事件に遭遇したらどうしたらいいのかを書いていきます。
※2020年の5月より、法律によって仮想通貨→暗号資産という名称に変わったのですが、暗号資産という呼び方にまだ馴染めないので、この文章では仮想通貨という呼び方をさせてもらいます。

私自身、法律にも仮想通貨にも詳しくないですが、最近仮想通貨の詐欺が増えていて、今回アーティストにも被害が出かねない事例を目の当たりにしたので、注意喚起として頑張って書きます。上手には書けませんが、読んでSNS等で拡散していただければ幸いです。

私が目にした事例では、以下のような流れで事件が起きていました。

  1. まず先に現金での入金を遅らせる
    故意になのかたまたまお金が無くてそうなったのか分からないですが、最初に作品の売り上げの入金が予定期日より遅れたそうです
  2. アーティストから入金を催促される
    入金が遅れれば当然ながらアーティストから入金がないけどいつになりますか?等確認されるでしょう
  3. 今現金では払えないが、仮想通貨でなら払えるけどこれでいいか?と聞く
    何度か催促したのちにこういう質問をされたようです。突然のことで混乱していると「あと数か月で現金化出来るようになるし、将来的に値も上がるから持っておいて損はない。」等と説得された、との事。ちなみにこの仮想通貨は今まで聞いたこともなく、一般に出回ってもいないまだ開発中の仮想通貨です。
  4. 仮想通貨管理用のアプリをインストールさせ、ギャラリーオーナーより仮想通貨を送金する
    混乱しているアーティストを誘導するようにスマホに仮想通貨管理用のアプリをインストールさせ、仮想通貨を送金してしまう。

ここで何が問題なのかというと、この仮想通貨があと数か月で現金化できると言っていたにも関わらず、その後3年も現金への換金も通貨として買い物等に使うことも出来ず、ビットコインにさえ変えることが出来ないという状態が続いているということです。
つまり、このまま換金が出来ない状態が続けば、現金で販売した作品の代金を仮想通貨で支払うことにより、現金を全てオーナーが自分のものにしてしまった、ということになり、詐欺だと言われても仕方がないでしょう。
じゃあ、この仮想通貨はどこから来たの?というと、ギャラリーのオーナーがICO(仮想通貨の開発への出資、最初に低価格で仮想通貨を得ることが出来る)により入手したものです。更に、今回の場合、ギャラリー自体がこの仮想通貨を開発している企業の援助を受けていて、オーナーも出資者の勧誘等仮想通貨の開発にも関わっています。

ただ、現状では仮想通貨に関する法律がまだちゃんと整備されておらず、元々詐欺を事件として立証する事も中々難しく、非常に曖昧な状態なので、実際は自分で頑張って調べるとか、詳しい人に相談するなどして、自分自身で身を守るしかないのです。

以下、ざっとした内容ですが、もし今後上記のような目に合いそうになった場合、何を基に判断すればいいか?のリストです。

  1. 実際に流通している仮想通貨なのか?
    一体何枚発行されていて、何人の人が持っていて、主にどの国で普及しているのか?
    買い物に使えるのか?とか実際に「お金」として使える状態なのか?
  2. 金融庁に登録している業者が運営する取引所で扱われている仮想通貨なのか?
    日本では金融庁に登録している業者しか仮想通貨を扱うことが出来ません(登録には審査があるので怪しい業者は登録できません)。
    金融庁へ登録されている取引所が扱う仮想通貨しか日本円には換金できません。
    海外で開発しているから日本の法律は当てはまらないから大丈夫、とか言うこともあるようですが、海外に住んでる人なら現地の通貨で換金してそのまま使えばいいですけど、日本に住んでる日本人が極端な話タイバーツとかで受け取っても、いちいち日本円に換金しないと使えないわけで、換金するための知識と手間と手数料が必要なわけです。
  3. 換金は簡単に出来るのか?
    上の話と被りますが、そもそも換金することが可能な通貨なのか?
    換金するのに異常に複雑な手順が必要だったりしないか?(仮想通貨を取引するためには本人確認が必要なので、連絡先やパスポート写真の登録等といった手続きは必要なので、その手順はどんな通貨でも必要です。)
    作品の売り上げとしてもらうなら、生活費として使うこともあるでしょうから、現金化できないと困りますよね。

その他、仮想通貨詐欺に注意!手を出すと危険な詐欺コインの見分け方とか、他にもネットで調べると私よりもずっと分かりやすく書いてくれている記事があるので、気になった場合は調べてみてください。

例えば、怪しい仮想通貨ではなく、ビットコインだったらいいのか?と考えてみても、今後も値上がりするかどうかは確証はない訳で、人によって「面白そうだからビットコインでもらいたい」という人、「自分は堅実に生きたいから絶対現金でもらいたい」とか様々でしょう。

もし今後そんな仮想通貨聞いたこともない!というのに関わりそうになった場合、まずは、その仮想通貨の名前で検索してみてください。
驚くようなニュースがたくさん出てくるかもしれませんよ。例えば、既に警視庁から捜査を受けていたりとか…

なぜ私がこれを書いたかというと、先に被害にあったアーティストさんが正直に経緯を知らせてくれなかったら、私も同じ目に合っていたかも知れなかったからです。
被害を免れたので私にとっては他人事ですが、非常に許せません。

でも、もしこれが怪しい使えない仮想通貨ではなくて、ビットコインだったら、今頃私もお金持ちだったかもしれないのに!ともちょっと思ってしまいます。
しかし、人間欲が深すぎると詐欺に騙されたりとろくなことがないので、慎ましく生きるのが一番です。

 

現代美術作家 シムラヒデミ
主に刺繍糸を素材に作品を制作するアーティスト。大学でファッションデザインを専攻、卒業後3DCG制作の仕事に就く。
2005年より現代美術作家としての活動を開始。デビュー直後にパリで個展を開催する等順調に海外での活動を広げる。2006年より社員旅行をきっかけに好きになった街、上海へ移住。それほど長く住むつもりではなかったものの、リーマンショックによる画廊閉鎖など予想外の展開に翻弄され、7年近く住んでしまう。
2013年12月日本帰国、埼玉県所沢市在住。引き続き現代美術作家として活動。現在、2025年のアーティスト活動20周年の為に作品を作り溜めている。

このブログではアート・文化・歴史に関する考察、自身の活動報告等を投稿しています。
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