このたび、アートマガジン Louvre Unbound Vol.6 にインタビュー記事が掲載されました。
このインタビューは、2023年にポルトガルの Luka Art Gallery で開催された二人展「JIKAN」での展示をきっかけに、同ギャラリーのキュレーター Ana Carolina de Villanueva 氏のご紹介・ご協力のもと実現したものです。
掲載元より翻訳・掲載の許可をいただきましたので、日本語版を公開いたします。
記事では、作品制作の背景や制作プロセス、現在の制作に対する考え方、そして展示の感想などについてお話ししています。
Step into the world of Hidemi Shimura -シムラヒデミの世界へ-
この記事は、Luka Art Galleryのキュレーター、Ana Carolina de Villanueva氏のご協力のもと制作されました。
Hidemi Shimuraは、イメージを生み出すことを「共存」についての瞑想として捉えています。それは、色彩、反復、そして一見すると調和していないものの中に潜む繊細な調和によって導かれるものです。
巻いた刺繍糸や触感のある素材を用いながら、彼女は対照的な色彩や予想外の組み合わせが調和の取れた視覚空間へと収束する、緻密な構成を生み出しています。
彼女の制作は、日常の体験や異文化との出会いを幾層にも重なる抽象表現へと変換し、人と人、人と環境、そして感情との関係性を、現代を静かに、しかし深く映し出すものとして表現しています。
Hidemiさん、まずはあなたのこれまでの歩みと、この道を志した理由について教えてください。あなたの心を最初に動かした作品を覚えていますか?
母が趣味で日本画を描いていたため、子どもの頃はよく一緒に展覧会へ出かけていました。そのため、私にとってアートはいつも身近な存在でした。特に、日本画の色彩や質感に強く惹かれていました。
その後、大学ではファッションデザインを学びました。専攻はファッションでしたが、担当の先生方や授業の多くは現代美術と深く関わっており、その影響を強く受けました。その頃から、素材や反復する構造がどのように視覚体験を生み出すのかに、次第に興味を持つようになりました。この関心が、糸を主な素材とする現在の制作へとつながっています。
私の人生を決定づけた一つの作品があったわけではありません。むしろ、そうした幼い頃からのさまざまな経験の積み重ねが、少しずつ私をアーティストの道へと導いてくれました。

あなたの制作プロセスについて教えてください。すべてを計画して進めるタイプですか。それとも、即興性を取り入れる余地を残していますか?
私の制作プロセスは、シリーズによって異なります。アクリル板やアクリル棒に刺繍糸をストライプ状に巻き付けたり、ミシンで和紙を繰り返し縫ったり、糸を強く張って構造的な緊張感を生み出したりと、さまざまな技法を用いています。これらの要素に、自分で描いた絵画や他の素材を組み合わせることもあり、その結果、ミクストメディア作品となっています。
例えば、糸を巻いて制作する色彩豊かなストライプの作品では、まず、自分が表現したい色彩の雰囲気を捉えた写真を一枚選ぶことから始めます。制作の過程では、その写真を全体の構成を考えるための指針として参照します。ただし、写真の色をそのまま再現することは目指していません。色彩は、私自身の知覚や直感を通して再解釈されるからです。
基本的には、完成形のおおまかなイメージを持って制作を始めますが、制作そのものは直感的に進めています。そのため、即興的な展開や予期しない変化が生まれる余地も大切にしています。

ミクストメディア
46.5 × 34.3 × 5 cm
2025
あなたの作品、あるいはあなたの表現分野について、人々がよく抱いている誤解にはどのようなものがありますか?
よくある誤解の一つは、多くの人が私の作品を最初は絵画作品だと思うことです。
少し離れた場所から見ると、作品は描かれた絵画のように見えることが多く、そのまま近づかずに通り過ぎてしまう方もいます。一方で、素材の質感に敏感な方は、すぐに何かが違うことに気づきます。そして作品に引き寄せられるように近づき、実際には糸によって制作されていることを発見するのです。
私は、このように見え方が変化することに、とても強い魅力を感じています。それは、私たちのものの見方が、素材に対する馴染みや経験によって形づくられていることを示しているからです。その意味で、「これは絵画ではなく、糸によって制作されている作品なのだ」と鑑賞者が気づく瞬間は、私が生み出したいと考えている体験には欠かせない一部となっています。

ミクストメディア
98 × 98 × 4 cm
2025
現在、あなたにインスピレーションを与えているものは何ですか。また、それは時間とともにどのように変化してきましたか?
以前は、主に色彩や構造、そして知覚に関心を持ち、糸やさまざまな素材を用いた反復的なプロセスを通して、それらのテーマを探求していました。
近年は、身体的な困難を経験したことで、自分のエネルギーには限りがあること、そして時間が有限であることを、以前より強く意識するようになりました。そのことをきっかけに、アーティストとして残された人生をどのように過ごしたいのか、そして作品を通して本当に表現したいことは何なのかを、より深く考えるようになりました。
この経験を通して、以前の自分には到達できなかった、より深い内省の段階に至ったと感じています。また、自分がどのような作品を残したいのか、そしてそれを、より個人的で意味のある形でどのように表現していくのかについても、これまで以上に慎重に考えるようになりました。その結果、一つひとつの作品について、より意識的に向き合うようになり、繰り返し生み出せる構造ではなく、一点ものにより近い作品を制作したいという思いが強くなっています。
こうした思索は、今の私にとって大切なインスピレーションの源となっています。

キュレーターのAna Carolina de Villanueva氏とLuka Art Galleryとの協働は、対話、感受性、そして包摂性を大切にするキュレーションを反映しています。
彼女のアプローチは、あなたの作品が国際的なアートシーンの中で紹介され、位置づけられる上で、どのような影響を与えましたか?
Ana Carolina de Villanueva氏とLuka Art Galleryとの協働は、私にとって非常に意義深い経験でした。特に、彼女が私の作品、山口正樹氏の彫刻作品、そしてビースター宮殿の歴史的建築との間に、繊細な対話を生み出してくれたことが印象に残っています。
私は実際に会場を訪れることはできませんでしたが、展示風景の写真からは、糸を用いた私の作品が単独の作品として展示されるのではなく、「時間」に対するさまざまな捉え方をテーマとした展覧会「JIKAN」の中で、より広い空間的・概念的な対話の一部として紹介されていたことが伝わってきました。
色彩豊かな糸の作品が持つ構造的なリズムと、山口氏の彫刻が持つ有機的な存在感との対比によって、一般的な作品展示方法を超えた、重層的な鑑賞体験が生み出されていました。彼女のキュレーションによって、私の作品は単に平面上のイメージとしてではなく、空間や動き、そして時間との関係の中で存在する要素として理解されるものになったのです。
また、日本とポルトガルという文化的文脈を結び付ける対話の中に作品を置き、素材同士や芸術表現同士の関係性を強調したインスタレーションを通して、私の制作は特定の文化的枠組みに限定されることなく体験できるものとして位置づけられました。そのことによって、私の作品は国際的な観客とも、より自然につながることができたのではないかと思います。
山口氏とはこの展覧会をきっかけに知り合い、それ以来、東京でお互いの展覧会を訪れ合う関係などの交流が続いています。思慮深いキュレーションに支えられた、このようなアーティスト同士の対話が、展覧会を国際的な文脈の中へ自然に位置づけることにつながったのだと感じています。

Louvre Unboundへの参加によって、あなたの作品は国際的かつ多分野にわたる芸術コミュニティに紹介されることになります。
この雑誌は、多様な芸術表現や異なる地域的背景を持つ作家たちの声を広く届け、それらの間に意義あるつながりを育む上で、どのような役割を果たしていると思いますか?
この雑誌を拝見して特に印象に残ったのは、さまざまな地域的背景を持つアーティストと、多様な現代アートのアプローチを一冊の中で結び付けていることです。こうした異なる表現が並んで紹介されることで、それぞれが互いとの関係性の中で鑑賞され、独立した表現が共存できる意義ある場が生まれていると感じました。
私は、このようなプラットフォームは、アーティストと鑑賞者の間だけでなく、アーティスト同士のつながりも育むものだと思います。このように幅広い視覚表現や文化的な視点に触れることは、自分自身の作品をより大きな国際的文脈の中で捉え直すきっかけとなり、新たな対話や考え方への扉を開いてくれると感じています。

ミクストメディア
41 × 29 × 0.5 cm
2023
※この記事は Louvre Unbound に掲載されたインタビュー記事を、掲載元の許可を得て翻訳・掲載したものです。原文の内容に沿って翻訳していますが、日本語として読みやすいよう、一部表現を調整しています。


